創業65年 地域密着型企業のDX推進成功のヒミツ 青森つばめプロパン販売株式会社(前編)

青森つばめプロパン販売株式会社
八戸市を拠点とし、ガス・灯油・醤油など、地域の暮らしに欠かせない多彩なサービスを提供している青森つばめプロパン販売株式会社さま。
創業65年の歴史をもつこの企業は、地域に密着した企業活動を行いながらも、常に時代の変化に対応し業務の効率化とサービスの向上を目指してきました。今回は、同社がどのようにしてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、成功を収めたのか、その背景や具体的な取り組みについて、黒澤代表取締役にインタビューを行いました。
事業内容
卸・小売業
社員数
約80人

社員が安心して働ける環境を

DXの推進をはじめるきっかけを教えてください

デジタルに関する取り組みは10年ほど前からはじめており、計画的に実施してきました。その動機は、単なるデジタル化のトレンドに乗るためではなく、「無駄な作業を減らし、従業員が早く家に帰れるようにしたい」という、社員の働きやすさを第一に考えたものでした。今回のテーマであるDXに関してですが、私としてはデジタルを使おう、デジタルに無理やり移行しようという意識は全く無く、「業務改善」を進めていくための手段としてデジタルを活用している感覚です。結果としてデジタル化を通じた、業務効率化や顧客の増加や満足度の向上に結び付けられています。

デジタル化をはじめたエピソードを教えてください

どこからがデジタル化のスタートかははっきり記憶していませんが、デジタル化シフトのきっかけが2つほどありました。
10年前は、外回りの社員が個人の携帯を使って会社に連絡を取り、その後、内勤の社員が顧客に電話をかけるという非効率なコミュニケーションプロセスを日常的に実施していました。これには、時間と労力がかかりすぎていると感じたため、全社員に携帯電話を配布し、直接顧客と連絡を取ることができるようにしました。これにより、業務のスピードが格段に向上し、顧客対応の質も大幅に向上しました。
2つ目は、集金業務の効率化です。以前は、社員が指定された時間に顧客の元へ出向いて、わずかな金額の集金を行うために1時間以上もかけて往復することがありました。これでは時間の無駄が大きすぎます。そこで、キャッシュレス化を進めることにしました。高齢者などには無理強いはせず徐々に浸透させる方針で実施してきましたが、現在では9割以上が口座引き落としを含むキャッシュレスでのお支払いとなっています。この施策により、「社員の負担が大幅に軽減されただけでなく、顧客にもより便利な支払い手段を提供できるようになりました。

※青森つばめプロパン販売株式会社さんの具体的な取り組みについては、次回の記事後編で詳しく紹介します!

もともとデジタルが得意な人材が多かったのでしょうか?

そんなことはありません。我が社は世の中より早めにコンピューターを導入するなどデジタル化に対する理解は昔からありましたが、他の中小企業と同様にExcelやWordを利用する一般的なレベルだったと思います。パソコンを使えない社員も少なくありませんでした。
この10年間、デジタル導入に取り組んできましたが、そうした会社の方針を社長である私自身が社員に説明し、皆に納得してもらって進めてきています。その結果、デジタル化などの新しい取組が進んでおり、離職率も低いことから社員の理解が得られていると考えています。最初はキーボードを指一本でポチポチと操作していた社員も、業務に適応してやってくれています。
当分は「やって見せる」段階が長く続きましたが、徐々に組織体制や社員さんの実力がついてきたため、現在では課題共有をして任せることも多くあります。私から意見することもありますが、約4割程度の社員が自分の本業と兼務しながらデジタル化をはじめとする社内変革に取り組んでいます。業務効率化が進んだからこそ一人一人の社員がより多くの仕事をこなせるようになり、兼務ではあるものの業務改革人材の育成ができるようになったと思います。成果が現れているため、さらに業務への意欲が高まり、現在でも想定以上の仕事を頑張ってくれています。

一緒にご参加いただいた上端さんと北田さん一緒にご参加いただいた上端さんと北田さん
会社の外観会社の外観

DX推進するための経営者の姿勢

DXを推進するうえで意識的に取り組んでいることはありますか

私が自分自身にまず言い聞かせ、そして、社員に伝えているのは理屈に合わない・説明できないことは絶対に取り組まないことです。
目の前の業務効率化にとらわれ、会社の都合を顧客に押し付けているようでは、顧客はもちろん社員の納得も得られないと考えています。
私自身がしっかり理解し、十分に腹落ちしてから物事を進めたいという思いが強く、業務の合間を見て大学や各種学校で勉強しています。その際に学んだマーケティング思考は、現在の様々な業務改善のベースとなっています。
他には、予算管理です。私が経理出身という事もあり、予算については「いくら投資したからいくら回収できる」という費用対効果で考えるのではなく、「このくらいまでなら投資をしても失敗が許される」という許容可能な費用範囲を投資予算として考えています。細かく指摘や監視をするのでなく、予算内であれば積極的に挑戦できる環境を重視しているためです。その結果、様々なアイディアや手法を試すことができ、自分たちに最も適したものを見つけ、利用することができています。私たちの会社が着実に成長を続けている理由の一つであると感じています。
もう一つ挙げるとすると、先ほどとも少し重なりますが社員が挑戦できる環境の整備です。
当然、事業を進める中では成功だけでなく、多くの困難に直面することもありました。私たちは、そうしたときに「うまく行かない」と終わらせるのではなく、軌道修正を図り、目標を再設定することで、新しいことに挑戦できる文化を培ってきました。また、未知のことへ挑戦する過程で、知らないことは話し合うという社内でのコミュニケーション文化が醸成されたことは、非常に大きな副産物でした。普段の慣れた業務からは得難い経験です。
今後も長期的に業務改善を社内で実施していくためには、経営側としてモチベーションだけではなく、目に見える成果を提供することが重要だと考えています。福利厚生の充実やさらなる投資を積極的に行うことで、社員にとって働きやすい職場づくりを目指していきます。

次回の記事後編では、青森つばめプロパン販売株式会社さんの具体的な取り組みについてさらに紹介します!

青森つばめプロパン販売株式会社

所在地 〒031-0012 青森県八戸市大字十日市字上樋田26番地11MAP
TEL 0178-96-1345
URL https://aomori-tsubame.com/