創業65年 地域密着型企業のDX推進成功のヒミツ 青森つばめプロパン販売株式会社(後編)

青森つばめプロパン販売株式会社

先日掲載した青森つばめプロパン販売株式会社さまの後編です。今回は、具体的な取り組みについての内容となっております。
前編の内容はこちら https://www.dx-aomori.com/case/2450/

事業内容
卸・小売業
社員数
約80人

デジタル化の具体的な取り組みを教えてください

いくつかあるので順番に紹介させてください。

集金業務のキャッシュレス化

最も時間をかけて実施したのは、「集金業務のキャッシュレス化」です。当時は、お客様のご都合に合わせて集金をしていましたが、残業にもつながっていたため解消に向けて取り組みを始めました。手数料や決済の手間について比較や検討をし、試行錯誤を続けた結果、現在は口座振替とコンビニ払いに集約することができ、約10年間かけて90%以上のお客様にキャッシュレスを利用していただけるようになりました。高齢者をはじめキャッシュレスへの移行が難しい方もいますが、無理強いはせずに進めていく方針です。

請求書の電子化

請求書の郵送をやめて、メールでの送付やウェブサイト内に「つばめe-check」サービスを整備しました。「つばめe-check」とは、毎月発行している請求書(ご利用明細等)をインターネットで確認できるサービスです。「つばめe-check」では、過去の請求額や使用量をグラフで確認できたり、請求明細・支払い実績をいつでも好きなタイミングで見ることができます。
郵便料金の値上げもあり2024年9月に請求書の郵送は廃止になりますが、移行期にはお客様の希望により従来通りのハガキ請求書を発行することなど柔軟に対応できたため、お客様の大きな混乱はなかったように感じています。もちろん社内の請求書発行にかかる業務も大幅に削減されました。

電話業務のプラットフォーム化

先ほどお話しした通り、従来は外回りの社員が個人の携帯を使って会社に連絡を取り、その後、内勤の社員が顧客に電話をかけるという非効率なコミュニケーションプロセスが社内に存在していました。社員へ携帯電話を配布することもそうですが、お客様からの注文を電子化することが、電話業務の非効率化を解消すると考え、対応しました。具体的には、多くの方が日常的に利用しているLINEや弊社ウェブサイトから注文できる仕組みを構築しました。弊社のLINE公式アカウントからは、灯油の注文に加え、つばめe-checkで請求額の確認をすることもできます。
お客様の様子を見ながら、使用できそうな方から徐々に移行を進めたため、こちらも大きな反動はなく進められました。
全社員への携帯電話を配布したことが、後のグループウエア、勤怠や経費清算システムの導入につながりました。グループウエアを活用し、朝礼や定時勤務を廃止して自由な時間に出勤できる制度も運用しています。また、受注システムに関しても、現在は自社企画による新しいプラットフォームを開発するなどして更なる環境の整備を目指しています。

LPガスの残量自動計測

弊社では法人と個人のお客様にプロパンガスの提供をしています。プロパンガスの供給のためには定期的にお客様の元に訪れメーターの検針作業を行わなければなりませんでしたが、最近は、LPWA(Low Power Wide Area)(省電力かつ広範囲での無線通信を可能にする通信技術)を活用し、自動で検針を行うシステムを導入しました。これにより、過去の消費実績データを参照しながらガス残量を予測することもでき、見通しをもって配送計画を作成することが可能になりました。
今年度は、設置率90%以上に達する予定で、データを活用したAI配送を一部地域で実証実験することになっています。また、検針業務にかかる作業時間の大幅な削減により、若手社員が工事業務にかけられる時間が多くなり、全体的に技術のレベルアップが認められる状態となったことも大変ありがたいことと思っています。

リモートワークの導入

新型コロナをきっかけとしてWeb会議が定着してきたこともあり、最近はリモートワークの導入を一部進めています。弊社は営業拠点が複数箇所あり、社員によってはどうしても通勤時間が長くなっています。そこに子育てや介護という事情が重なると、さらに負担が大きくなってしまいます。取り組みを始めた段階ですが、リモートワークの導入がゴールではなく、お客様や社員から選ばれる会社になるための通過点だと考えており、今後もお客様や社員のためになることは積極的に実施を検討していきます。

メンバー写真社内サイネージの活用
アプリの利用イメージ

酒・醤油の事業を行っているのはどうしてですか?

ご縁があって八戸市の醤油製造販売店、十和田市の酒販店の事業を承継しました。
弊社には「おもいをはこび地域をつなぐ」というキャッチコピーがあります。「おもい」には「重い」と「想い」がかかっています。ガスや灯油という重いものを配送しているのが弊社の特徴であり、長年培った地域内における配送サービス網との親和性は高く、強みを生かせる事業だと考えています。
事業を承継することができた背景にはデジタル化があります。日々の業務の中で出た課題をデジタル化により解決し、業務効率化でできた時間を新しい取組に使っています。

メンバー写真社内チームでブランディングデザインした
ギフト商品やパンフレット
酒のステップの様子

デジタルを駆使した事業に取り組んでいると聞きました!

「つばめデジタル三河屋構想」に取り組んでいます。三河屋は、サザエさんに登場する勝手口から出入りするサブちゃんをイメージしており、調味料などの日常用品を必要に応じて配達してくれます。
私たちは「組織と商品サービスを通じて社会貢献する」を企業理念として掲げており、普段我々のサービスを受け取っていただいている地域の方々のために何かできないかということを模索している中で思い浮かんだのが「つばめデジタル三河屋構想」です。高齢者の方をターゲットにしている理由として、地方では買い物するのにも車移動する方が多いですが高齢者の中には歩いて買い物に出かけているケースもあります。そうなると、重いものやかさばる物品などを一気に購入することができなかったり躊躇してしまいます。
私たちは、ガスだけでなく醤油やお酒、天然水などの商品も揃えていることから、生活に必要な物品を配送することで買い物が困難な方の課題を解消することができると考えました。すでに、灯油配達等の合間に地域住民の生活物品などの試験販売を開始しています。商品販売のデータを集約をすることで、適切なタイミングで販売ができたり、商品のラインナップを調整することができるため、効率的な販売をしながら地域貢献ができると考えています。もちろん進めながら、社員への普及やPDCAを意識した事業改善も実施していきます。「つばめデジタル三河屋構想」だけでなく、デジタル技術を使って取り組みたいことはまだまだあります!

これからデジタル化を始めたい企業に向けてのコメント

デジタル化に本格的に取り組むとなると、多くの費用がかかります。私は、しっかりと勉強し、理解を深めてから取り組むことが非常に大切だと考えています。
内容をよく考えずに投資を始めては効果を最大限に引き出すことができません。普通の設備投資であれば、まずは自社の課題は何か、どのような手法を用いれば良いのか、それはどの程度効果をもたらすか十分検討してから実行するはずで、デジタルへの投資はそれと同様だと捉えています。
デジタルは目に見えにくいため、物理的な製品のように手に取って話し合えるわけではありません。そのため、わからないことが多く、勉強しない限り効果的に活用することが難しいです。デジタル化の分野では、新しい知識や技術が次々に登場するため、常に謙虚な姿勢で学び続けることが重要です。学んだ結果、自分達に必要なものが必ずしも最新のものでなくても良いという事もあると思います。
経営者はビジネスにおいて変革や挑戦に伴い多くの選択をしなければなりません。今までの経験上、選択を迫られた際に挑戦を避けることの方が後々のリスクが高いと捉えています。たとえその挑戦に失敗しても、それを悔いるのではなく、学びを得る機会と捉えるべきです。多くの挑戦を続けた結果、社内ではシステム、メディア、三河屋等を指揮する多くのチームが誕生し、同時にリスキリングも格段に進みました。
一生懸命取り組んでも失敗することもあるでしょう。ですが挑戦しないで何もしないことの方が、私は嫌です。社長の姿勢は、会社や社員にも影響するため社員以上に挑戦や勉強をすることは必要だと考えます。デジタル化を含めた新たな取り組みには勇気が必要ですが、しっかりとした準備と学びの姿勢があれば、上手くいきますからぜひ実践してみてください。

青森つばめプロパン販売株式会社

所在地 〒031-0012 青森県八戸市大字十日市字上樋田26番地11MAP
TEL 0178-96-1345
URL https://aomori-tsubame.com/