「整備補修業の助っ人」を目指し60余年
青森のカーパーツ販売企業が挑む
RPAを活用した業務改善

株式会社フジモーターズ

1962年創業以来、「整備補修業の助っ人」として青森の自動車業界を牽引してきた株式会社フジモーターズ。県内8か所の営業所と2か所の出張所、さらに県外にも営業所と出張所を設けるなど、県内外でカーライフのトータルサポート事業を展開しています。今回は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した業務改善の取り組みについて、代表取締役副社長の新戸部大輝氏にお話を伺いました。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):パソコンやクラウド上で動く事務系の業務をロボットで自動化するテクノロジーのこと

事業内容
カーパーツ・最新工具販売 受託整備
協力企業
株式会社へプタゴン

定型業務の自動化で人材不足を解消できないか

DXに挑戦するきっかけについて教えてください

人手が足りなくなってきているというのが1番の課題でした。利益の源泉になっている自動車部品の注文電話を受ける業務が、人手不足のため、折角お問い合わせの電話をいただいても取りこぼしが発生している現状がありました。経験値の高いスタッフが潤沢にいれば問題ないのですが、私たちの業務は何万種類もある自動車部品という特殊な商品を販売するという関係上、ある程度の経験や知識がないと、お客様からの問い合わせに対応できないことが多いです。どうしても入社後半年から1年程度、一通り仕事覚えるまでにはそれなりに時間がかかります。

そのような現状がある中で、簡単な受付業務だけでも自動化する方法はないかと考えていました。

課題になっていた業務の流れについて詳しく教えてください。

まず、整備工場様からの電話を受けます。その際、車の情報を教えていただき、型式類別、車体番号、年式などから、弊社で使っている基幹システムで車の情報を読み出します。そして、その車に対して必要な部品、パットやベルト、プラグなど最適な部品を調べて、お客様にお届けするというのが弊社の受注フローになっています。

車は人と一緒で、車種ごとに使用する部品が異なります。同じ車種でも、年式によって使用する部品も違うこともあります。そのような問い合わせに対して、わたしたちプロが調べて、間違いない商品をお客様にお届けするというのが基本的な業務になります。

前述した通り、一つのご依頼に対して確認する内容が非常に多い業務となっています。現在のフローでは、お客様からの様々なお問い合わせに対し、受付や対応に時間がかかりすぎてしまうという課題があったため、定型業務だけでも自動化を図ることはできないか調査を進めました。

インタビューを受ける新戸部副社長インタビューを受ける新戸部副社長
電話注文を受けるスタッフ電話注文を受けるスタッフ

受注機会の向上、社内人員の再配置、顧客満足度向上で狙う収益率の向上

導入した技術の概要を教えてください。

お客様からいただく基本的な部品発注を、電話やFAX以外の方法で受付できるように試作アプリの開発を行いました

簡単なご注文については、電話で受けるのではなく、お客様側でパソコンや携帯だったりタブレットを使って注文をしてもらえるような仕組みを作れば、少しは電話を受けるスタッフの手間も削減できると考えました。
そのためにも、まずは入力の手間や、入力間違いの軽減のために、車検証のQRコードの情報を読み取って、車の情報、型式や基本情報を自動的に読み出すようにしました。そして、お客様側で部品を選択できるようにするなど、システムのブラッシュアップを行っていきました。

さらに、お客様が入力した情報をRPAで自動的に検索できるようにし、定休日や営業時間外でも見積もりを出せたり、より時短できるような仕組みの検証を行いました。

DXの取り組みにより達成したい具体的な目標はありましたか?

電話やFAXでの注文受付、在庫確認、発注処理が業務上の大きなボトルネックでしたので、まず、フロントの負担を減らすというのがミッションの1つでした。

電話が集中しすぎて取り逃しが起きないように、たくさん電話がかかってきてもヒューマンエラーを起こさないように改善したいと思いました。シンプルなご注文、難しいご注文にかかわらず、電話1本は1本に変わりありません。電話が多くなれば受け手が足りなくなります。特に手間がかかる注文をいただいた時はミスも起きやすくなってしまいます。

フロントの負担を減らすことで、既存の受注担当人員を営業人員として再配置することができますし、顧客への営業活動や提案活動に時間を割くこともできます。より業務がスムーズに進み、同時にお客様の利便性向上にも繋げることができればと、そこを目標にしていました。

弘前支店のバックヤード弘前支店のバックヤード
棚に振り分けられる商品棚に振り分けられる商品

課題として残る例外処理とDX人材の育成

テクノロジーの選択において直面した課題はありますか?

弊社の基幹システムは、自動車部品専用の受発注システムを利用しています。自動車関連部品を扱う業界の標準的なシステムですが、アプリケーションを相互に連携させる機能が搭載されていませんでした。基幹システム上の処理をRPAを用いて自動的に行うということに挑戦しましたが、あくまでも人力での操作が前提となった仕様のため、システム連携による効率化が難しい状況だということがわかりました。

通常業務のほとんどがその基幹システムを前提に業務フローが組まれているため、別のシステムに入れ替えることは難しく、現状も課題は解決できていない状態です。

システム連携の他にも、現状のままだと例外処理が多すぎて、実装には厳しい可能性がありました。シンプルに自動化できる部分だけでも導入できればと思ったのですが、自動化可能な範囲が狭すぎて、ごく普通の手順を踏んだとしても、例外処理がたくさん出てきてしまいました。現在は、RPA処理での解決以外に別な解決手段がないか模索しているところです。

例外処理以外でも課題はありますか?

やはり人材育成でしょうか。
ある程度のシステムを導入できたとしても、より使いやすいものにしていくためにはメンテナンスが必要になります。定期的にシステムのコアな部分をバージョンアップすること、その他にも、新しい部品や例外処理が出てきたときに、自社で適切な作業を施し、速やかに対応ができる環境を作ることが大事だと思っています。
もちろん、外注という選択肢もあるのですが、定期的に発生する業務は内製化し、業務にかかるコストやリソースを最小限に抑え、経済的なメリットを生み出すことも考えなければなりません。

DXは継続的な取り組みは絶対的に必要です。
そのために、従業員が効率的な作業を行うためのトレーニングを行い、効率化を図ること。そして最低限の作業は自社内で解決できるように人材を育成していく必要があります

会社全体で在庫数は5万を超える会社全体で在庫数は5万を超える
要望商品を検索するスタッフ要望商品を検索するスタッフ

DX実現の難しさとRPA業務の可能性

DXに取り組むにあたって成功するためのポイントや注意すべき点について教えてください。

取り組んでみて感じられたことが、受注業務のDX実現の難しさでした。その反面、受注業務以外で基幹システムにおけるRPA業務の実現可能性が高いことがわかりました。

DXで大事なのは、何をやればどの業務が負担減るのか、負担が重い業務は何なのか、働く人の時間に左右されてしまう業務はないか、それにより制限が出てきてないかなど、業務の課題をしっかり把握することが大事だと思います。あくまでも業務課題から、それを解決するためのデジタル化という順番です。

そのためにも、まずその業務に関わる処理内容を、実際に関係する全員が知る必要があると思います。そして、そこでやれると感じたものでなければDXは難しいということです。おそらく、頭の中でイメージできていないものは、システムに落とし込むことは難しいです。具体的に、どこからどこまでの業務を自動化したいのかということは明確にすることが大事です。

今後の展望や、これから取り組みたいと考えていることを教えてください。

今後は、サーバーのクラウド化を検討しています。
現在は自社内のサーバーを各拠点つないでいるのですが、それをクラウドに変えていきたいと思っています。今は全拠点で検索のたびに弘前のサーバーまで参照しに来ているような状態のため、動作スピードが遅くそれが課題の一つとなっています。システムが古いというのもあるのですが、クラウドにすることで、もしネットワーク上のトラブルが起きても、拠点のネットワークさえ生きてれば、クラウドで検索できるようにしたいと思っています。

もうひとつ、人事関連業務のペーパーレス化を推進していきたいと思っています。
弊社は拠点が多いので、例えば、各営業所で押印、記入してもらったものを本社に返送し、チェック後間違いがあった場合、書類を返送し、訂正いただいた後に、再度返送するなど、ひとつの書類のやり取りに1週間~2週間かかってしまうこともあります。勤怠管理や給与関連の電子化はされているのですが、それ以外の人事に関わる部分は紙ベースになっていますので、身上異動届や雇用契約書、労働契約書などをペーパーレス化できればと考えています。

弊社のDXは現状では理想の10%程度の達成率ですが、今回でRPA業務の幅の広さと、その可能性の大きさを感じることができました。今回経験して分かったことを踏まえて、今後は間接分野におけるDXを推進していきたいと思っています。

託児エリアも完備託児エリアも完備
整備補修業の助っ人を目指して「整備補修業の助っ人」を目指して

DXで得られた効果

課題

  • 人材不足による機会損失、業務の圧迫
  • 電話やFAXで受け付けている問い合わせの作業効率改善
  • 受注ミスや、電話の取り逃しによる機会損失
  • 営業力の強化

効果

  • RPAを活用したWEBからの自動受付による作業効率改善の可能性が見出せた
  • RPA導入による間接業務への展開、新たな発想ができた
  • 見積・受注業務の自動化、実装に向けたシステムの土台の構築ができた

株式会社フジモーターズ

所在地 〒036-8076 青森県弘前市境関1-1-7MAP
TEL 0172-27-4221
URL https://www.fujimotors.co.jp/